
【プレスリリース】
環境学部 徳田准教授らが島根県大田市猛鬼(もうき)海岸から新種のイシサンゴ化石を発見!
論文名:Azooxanthellate colonial corals from the Miocene Omori Formation, Shimane, Japan
島根県大田市の中新統大森層から産出した無藻性群体サンゴ化石
島根県大田市の中新統大森層から産出した無藻性群体サンゴ化石
著 者:Yuki Tokuda, Naoto Yamada, Hiroumi Endo, Asuka Sentoku, Yoichi Ezaki,
Hiroki Hayashi, Yoshihiko Matsuura, Shigenori Kawano
Hiroki Hayashi, Yoshihiko Matsuura, Shigenori Kawano

Tokuda et al. (2025)をもとに改変
【研究概要】
現在知られているイシサンゴ目(刺胞動物門、花虫亜門、六放サンゴ綱)の現生種1698種のうち、およそ半分が体内に褐虫藻を共生させない無藻性のサンゴです。その大部分は深海域で生息しています。特に無藻性の群体イシサンゴは、深海域で多様性が豊かな冷水性サンゴ礁の枠組みを形成する重要な生物です。しかし、無藻性イシサンゴ化石に関する研究はほとんど進んでいません。日本からも無藻性のイシサンゴ化石の産出が報告されていますが、新生代の中新世の地層から記載された種はわずか6種にとどまっています。本研究では、島根県大田市猛鬼海岸に分布する中新統大森層から産出した無藻性イシサンゴ化石を用い、マイクロフォーカスX線コンピュータ断層撮影法(CT)により、非破壊で骨格形態の詳細な解析を行いました。その結果をもとに、Petrophyllia niimiensis、Dendrophyllia okamotoi、および新種のDendrophyllia mokiensis(和名:モウキキサンゴ)の3種の無藻性群体イシサンゴを記載しました。特に、新種であるDendrophyllia mokiensisは仮軸状群体を形成する最古のDendrophyllia属サンゴであることが分かりました。Dendrophyllia属の中にはさまざまな群体形がみられますが、本研究の成果はそれらの進化過程を考える上で非常に重要です。また、Petrophyllia属とDendrophyllia属の両者が主要な枠組み形成者として関与する冷水性サンゴ礁や高密度サンゴ群集の報告はこれまでありませんでした。本研究の結果、Petrophyllia属とDendrophyllia属の両者が同一層準から多産することがわかりました。Petrophyllia属とDendrophyllia属の両方のサンゴが優占する無藻性イシサンゴ群集が報告された初めての例です。これらのことはPetrophyllia属が優占する無藻性群体イシサンゴ群集が、新生代においても他のイシサンゴと共存しながら広く存在していた可能性を強く示唆します。Petrophyllia属のサンゴは、現在の海ではオーストラリアに1種のみが確認されるのみで、冷水性サンゴ礁の形成に寄与していません。本研究は、このPetrophyllia属の衰退の原因や、深海域で多くの生命を支えている冷水性サンゴ礁を構成する無藻性群体イシサンゴの変遷を理解するうえでも、新たな知見を提供しています。
【謝辞】
マイクロフォーカスX線CTスキャン装置の使用に際し、鳥取県産業技術センター及び鳥取県産業技術センター研究員田中章浩博士には多大なるご支援を賜りました。また、タイプ標本の収蔵に関し、島根県立三瓶自然館の今井悟学芸員にご協力いただきました。記してここに深く感謝いたします。
【資金】
本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金(18K13649、20K04147、18H03366、21K14032、23H01258、24K07203)、および公立鳥取環境大学特別研究費の支援を受けて実施されました。
■研究内容に関する問い合わせ先
公立鳥取環境大学 環境学部
准教授 徳田 悠希(とくだ ゆうき)
E-mail:tokuda-y@kankyo-u.ac.jp
TEL:0857-32-9117
■報道に関する問い合わせ先
公立鳥取環境大学 入試広報課