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TUESレポート

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環境学部 徳田准教授らの研究チームが、東南極白瀬海底谷の水深800mでイシサンゴを発見し、生体サンゴの採取に成功しました

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公立鳥取環境大学の徳田 悠希 准教授、名古屋大学の自見 直人 講師、山口大学の岩谷 北斗 講師、秋田大学の松井 浩紀 助教らの研究チームは、第65次南極地域観測隊(隊長 国立極地研究所 橋田 元)における、重点研究観測「東南極氷床変動の復元と急激な氷床融解メカニズムの解明(研究代表者 菅沼悠介)」の一環として南極観測船しらせによる海洋観測を行いました。その結果、東南極リュツォ・ホルム湾の白瀬氷河の前面に位置する白瀬海底谷(水深800m)でイシサンゴが多数生息していることを確認し、その採取に成功しました。

当研究チームはROV NIPROV-2Kを水深800mまで潜行させ、白瀬海底谷に生息する多数のイシサンゴの生態観察に成功しました。また、二代目しらせでは初となるビームトロール(底引き網)観測により、生体サンゴを含めた多くの貴重な海洋生物を採取することに成功しました。

南極にサンゴが生息することは知られていましたが、これまでの研究は全て氷の少ない外洋域で行われてきました。本観測では、通常の観測船では到達できない定着氷域の最奥部で、しかも氷河の前面の深海という、未踏の研究領域で観測を成功させました。このような場所での研究例は南極全体をみても過去に無く、世界初の快挙です。

白瀬海底谷等、南極沿岸に流入する暖かい海水は、南極氷床の顕著な融解傾向の原因となっています。この顕著な融解傾向と地球温暖化の関係や、この融解傾向がいつ頃から始まったのかを知ることは非常に重要です。今回採集に成功したイシサンゴは100年以上生きることが知られており、徳田悠希准教授はこの骨格試料を分析することにより、産業革命以降の白瀬海底谷の環境の変化を明らかにする予定です。

ROVにより撮影したイシサンゴROVにより撮影したイシサンゴ
ビームトロールで採集したイシサンゴビームトロールで採集したイシサンゴ
南極観測船しらせ(二代目)南極観測船しらせ(二代目)
ROV(NIPROV-2K)ROV(NIPROV-2K)
氷海でのビームトロール観測氷海でのビームトロール観測
ビームトロール曳船後の甲板の様子ビームトロール曳船後の甲板の様子