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TUESレポート

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中華人民共和国建国70周年記念 建築史シンポジウムでの招聘講演(浅川教授)

今年の中国学術界は建国70周年でざわめいています。中国建築学会は建築史分会国際シンポジウム「近70年建築史学研究と歴史建築保護-中華人民共和国建国70周年記念」を11月9日(土)、北京工業大学で開催し、浅川滋男教授(本学環境学部)が講演者として招聘されました。日本人では唯一の招聘者です。演題と目次は以下のとおりで、講演はすべて中国語でおこなわれました。

 

東大寺頭塔の復元からみた宝塔の起源-チベット仏教ストゥーパとの構造・配置の比較-
1. 東大寺と頭塔
2. 頭塔の遺構解釈と復元案
3. 頭塔の系譜と建設背景
4. 密教の拡散と毘盧遮那仏
5. 後期密教と立体マンダラ
6. 浄土と寺院の距離

 

頭塔は東大寺南大門から約1km南側に離れて建つ奈良時代後半の方形段台型仏塔であり、早くからインドネシア・ジャワ島の世界遺産「ボロブドール」との類似性が指摘されてきました。しかし1980年代以降、奈良文化財研究所の発掘調査が進むにつれ、中国の塼塔(レンガ積みの塔)起源説が有力視されるようになって今に至ります。浅川教授は発掘調査に参加され、報告書(2001)に復元図を描かれましたが、「塼を使わない戒壇状の遺構」を塼塔の影響とみる考え方には否定的な立場をとられています。近年、チベット仏教遺産の調査研究を進めるなかで類例が少なくなく、インドを震源とする密教の拡散こそが頭塔造立の背景にあると考えられ、後期密教に顕著なストゥーパや立体マンダラの配置・構造から頭塔の起源を捉えなおそうと試みました。
東大寺は南大門の約1km南に巨大なストゥーパ、もしくは立体マンダラをつくりたかった。それは複数の尊格によって構成された浄土のモニュメントであり、東大寺境内を正面遠方から浄化し、守護する役割を果たしていた。その水平軸は此岸(世俗)と彼岸(浄土)の垂直軸の遠距離性を投影したものであろう、というのがこの講演の結論です。

 

 

関連リンク先(浅川研究室ブログ)

頭塔再考(1)

頭塔再考(2)

頭塔再考(3)

頭塔再考(4)

頭塔再考(5)

建国七十周年の新中国(二)

 

講演風景講演風景
頭塔の復元CG頭塔の復元CG

 

青海省ゴマル寺の立体マンダラと境内の位置関係青海省ゴマル寺の立体マンダラと境内の位置関係
東大寺-浄土の垂直軸と南大門-頭塔の水平軸東大寺ー浄土の垂直軸と南大門ー頭塔の水平軸